温かな春~(同性)小説サイト~

思いのままに小説を書いたり、twitterでのリクエストにこたえたり、 作品に対する思いや秘話など語っていくサイトです。「冷たい春」の番外編を主に書いていますので、本編がまだの方は本編の方からぜひ読んでみてください!(Twitterに本編URLあります) twitter:@moco_ice

できること

冷たい朝


とりあえず、スポンジを手に床をこすってみる。
けれど、それがうまくいっているのかがまったく分からず、くびをかしげた。

こすってもこすっても、
そこにあるのはかわりばえのない床だけ。

とりあえず浴槽のなかもやってみようと、ふちにのりあげる。

そのとき、足がすべって目の前がくるんとかいてんした。


頭のうしろに、衝撃がはしる。


ぐわんぐわんって、世界がまわるみたい。

そういえば、こういうこと前にもあった。
最近は、あまりないなぁ。


こんな風に頭がおかしくなったときは、
はげしくあつかわれて、気持ち悪くなるの。


ぼんやりとした視界に、ヒロトがみえる。


ぼくは、施設にいたときのことをおもいだしていた。


施設にいたときも、
頭がおかしくなったときには、気づけば目の前にヒロトがいた。


「何やってんだ、お前は」


でもあのころより、おこっているようにみえる。


「……ね、ゆか、どう?」

「うるせぇな。頭見せろ」


ぼくが、かじ、できないのに、ここにいるから、
怖い顔しているのかなぁ。


「あし、すべったの」

「少し赤くなってるな」


足が、すべっただけなの。

だから、できないわけではないし、
これなら、できるかもしれないの。


ただほんの少し、足がすべっただけだよ。




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できること

冷たい朝


ぼくの手を上からつつむようににぎってヒロトがしっかりとそこをふきあげる。

こんな風に力をいれたら、きれいにふけるみたいなの。


「ったく。
なんでまた急に冷蔵庫なんか開けたんだか」


おりょうりは、失敗したの。
でも、他のことだったらできるかもしれない。


あたりを見渡す。
ヒロトはいつも、何をしているっけ。


そうだ、ぼくがおふろに入るとき、いつもそこにはお湯がたまっている。


ヒロトはお湯をためる前に、スポンジでお風呂をごしごしってしてるよ。


「飯作るから、おとなしくしとけよ」


おとなしく、良い子にしていたらいいのかなぁ。

きっと、かじをやるのは良い子なの。



かじしないと、出ていかないといけないんだって。


おふろばをのぞいたら、いつもヒロトがつかっているスポンジも置いてある。


これは、ぼくにできることかも。
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できること

冷たい朝


ヒロトが毎朝持っている白くて丸いものを手にとる。

これはたぶん、たまごっていうもの。


でもこれをどうしているのかが全くわからない。
このまま食べているわけではないだろうけれど。


くるくると手の中で転がしていたら、
ゆかにたまごが落ちてわれる。


「あ」


黄色いものがひろがり、頭の中がぐるぐるとうずまく。
なぜこうなるかもわからないし、
どうやったら良いのかもわからない。


「何やってんの、お前」

「あのね、ヒロト」

「餓鬼の玩具じゃないんだよ、これは」


ため息を吐いたヒロトが、タオルを手にもどってくる。


「ほら、そこ拭いて」

「うん、うん」

「お前いると仕事が増えるな」


黄色のえきたいをふきながら、首をかしげる。

ヒロトがしてる家のことを減らそうとおもってやったのに、
どうしてしごとは、増えているのだろう。


「お茶は入れとくから、あとでそれを飲め。
ふいたらそれ洗わないといけないけど、お前の握力じゃ絞れないだろうな」


こんなことがしたかったわけではないのに、
どうしてこうなっているのだろう。


「ぼくがいると、かじ、増える?」

「ああ、増えてるかもな」

「……うん、うん」


むねのあたりが、きゅっとなる。
けれど、この気持ちをどう表現するのかが分からない。

分からないから、何も言えない。

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できること

冷たい朝


おせんたくものをたたんだあと、
ヒロトは大抵れいぞうこの中をみてごはんの支度をする。

ヒロトがいつもやってること、できるかな。

ぼくは、台所まで歩いてれいぞうこの前に座ってみた。

引っ張るけれど、うまくあかない。

そういえば、じぶんでこれを開けたことがないの。


両手に力をいれてひっぱったら、
いきおいよくドアがあいて手首をぶつける。


すこし、いたいの。


「お前なにしてんの。
喉でも乾いたの?」

ヒロトはすこし怒っているみたいな声。

家のこと、やろうとしているのに、どうしておこるのかなぁ。


れいぞうこの中には、たくさんのものが入っていて、

ぼくの知らないものもあった。


どれをどう使ったら、
いつもヒロトがもってくるごはんになるの?


ひとつひとつ、手にとってみる。

首をかしげていたら、れいぞうこからピーピーという電子音が鳴った。



「おと、する」

「開けっ放しだと知らせるんだよ、それ」

「れいぞうこ、怒ってるの?」

「あ?まあそうかもな。
喉乾いたならペットボトルに入ってるお茶ここまで持ってこい」


首をふる。
べつに、のどがかわいている訳ではないの。

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できること

冷たい朝

おうちの中でのんびりとテレビを見ていたら、
女の人と男の人が言い争いをしていた。

「ヒロト、ヒロト、けんか」

「ドラマだろ。お話だよ、それ」

「おはなし」

女の人が、泣きながらおこっている。
これはほんとうにおはなしなのかなぁ。

『あなたなんか1つも家のことしないくせに!!
私だって働いているのよ!!』

はたらく。
ぼくは、はたらくないってヒロトいっていた。

今はヒロトもはたらくはなくて、ぼくがいるからできないって。


『家のことしないなら出ていってよ!!
家事を全部私に押し付けないで!!』

『分かった分かった。やるから、
もう泣くなって』


かじをしないなら、出ていって。

頭の中に流れた言葉を理解しようと、
なんども復唱する。


でていく、でていく。
おうちを?


服をたたみおえたヒロトが、タンスの中へとしまっていく。
ぼくは毎日、ヒロトがいえのことをするのを見ている。


ぼくにも、できるかもしれない。

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