温かな春~(同性)小説サイト~

思いのままに小説を書いたり、twitterでのリクエストにこたえたり、 作品に対する思いや秘話など語っていくサイトです。「冷たい春」の番外編を主に書いていますので、本編がまだの方は本編の方からぜひ読んでみてください!(Twitterに本編URLあります) twitter:@moco_ice

なつ

冷たい朝


家に帰ると、はなびを早くあけたがる僕に
ヒロトは夜まで待てと言った。

ぼくは、はなびをだきしめたり、
横においてちらちらみたりして待ったの。


よるごはんをたべたら、外に出るよって、ヒロトがいった。

ぼくは花火をぎゅっと抱え込んでくつを履こうとしたけれど、

うまくはけなくて、困ったよ。


ヒロトは大きなため息を吐いて、手をだしたの。


「持っててやるから」


彼に渡すなら、なによりもあんしんなの。

ヒロトに花火をもってもらって、靴を履く。

さいきんは、上手にはけるようになったよ。


くつをはけたら、
ヒロトは少し乱暴に花火をかえしてくれた。


花火をもっていくのは、ぼくのやくめ。


ついたのは小さな広場で、そこにはもうみんながいたの。


「まさか高槻が花火って言い出すとはな!
いやー本当面白いわ、似合わなすぎて!」


しょおが笑って、ヒロトがそれを睨む。


「まあ、悠と花火もしたかったし、良いけど」

「翔、うるさい」

ゆうは少し面倒くさそうだけれど、
しょおは、ゆうと花火したかったんだって。

ぼくと同じだなと思う。
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なつ

冷たい朝


花火を落とさないようにぎゅっとだきしめて歩く。

外は、お部屋の中よりずっとあつかった。

あついのが、なつ。

ぼくはまた、ひとつ覚えたの。


「頭、くらくらしない?」

「うんうん」


たくさん暑いのにあたると、
ときどき頭がおかしくなってしまうことがあるけれど。

今日は、大丈夫みたい。


ふいにとなりを見ると、
ヒロトはぼくよりもずっとたくさんの荷物を持っていた。


重くないのかなぁ。
ヒロトはたくさんぎゅっとできるから、花火が上手なのかなぁ。


花火をだきよせてから、
もっとたくさん、
手があったら良いのにとおもう。

そしたら、ヒロトの荷物だってもてるよ。


「あいつらにメールしとくか」

「みんな、くる?」

「ああ。
誰かお前の世話もしてくれるだろ」


みんなで、はなび。

不思議な言葉だなとおもう。


ぼくは、みんなも慣れないし、
花火も、はじめてなの。


「はなび、いたい?」

「あー失敗したら痛いかもな」

「うんうん、わかったの」

「うんうんじゃないだろ。
痛いのは嫌になれよ、早く。
やり方は教えるから、ちゃんと聞けよ?
お前はバカなんだから」

「うんうん」
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なつ

冷たい朝


胸でしっかりと花火をだきよせるぼくに、
ヒロトは、丸いものを差し出す。

知っている。これは、お金というもの。
このお金をわたして、すべてのものはもらうの。


そういえば、施設のなかでも、お金の話はよく出ていたなとおもう。

春は高くて、
ぼくは安いって言っていた。


お金の価値とか、よくわからないし、
ぼくはそれを手に入れる方法もしらないの。


「早く受け取れ」

「でも、はなび」

「それそんなにぎゅっと抱きしめなくても持てるだろ。
俺は後ろに並ぶから先にレジに行け」


しかたなく、片手ではさみこむように花火を持った。

それから手を出すと、そこにお金を乗せてくれる。


うん、うん。
なんとか、持てるの。


レジでお金をわたすときは、ほんのすこしどきどきした。


この世界には、
たくさんの顔の人、声の人、表情の人がいる。

施設の中は知っているひとばかりだったのに、
外の世界は、知らないひとばかりだなとおもう。


こんなにたくさん知らないひとがいるのに、
ヒロトにあったのは、
もしかしたら、すごいことなのかもしれない。


「ありがとうございました」

「うん、うん」



花火をもらって、またぎゅっと抱きしめる。

ヒロトはそんなぼくを無表情でみおろした。



買い物できた。
そして、ヒロト、みていてくれたの。

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なつ

冷たい朝


それから、ヒロトと一緒におでかけをした。

外は、おへやの中と違ってずっと熱くて、
太陽はまぶしくて、なかなか空をみていられない。


「太陽見すぎるなって」

「うん、うん」


キラキラをみていたい気持ちはあるけれど、

ヒロトがだめということは、してはいけないのだと思う。


スーパーについたら、ヒロトはカゴの中に食べ物をたくさんいれる。

ぼくは、ヒロトの後ろをついてあるくのは、すき。


あるくのも、前ほどつかれなくなったとおもうの。


「あった、ほら」


ヒロトが袋にはいったものを、ぼくに手渡す。



「これ、花火。もってて」

「はなび?ちいさいの。キラキラない」


それはテレビで見たものとは違い、とてもシンプルなものだった。


それでも、もっててと言われたからしっかりと抱きしめるようにしてもつ。


キラキラはないけれど、はじめてみるものなの。

はやくあけてみたい。


きっと落としたら、
もっていられないと思われて、
花火も、だめになるかもしれないの。


おててをしっかり握らないと、できないって言っていたから。
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なつ

冷たい朝


ヒロトが、トーストの乗ったおさらを運んでくる。

あさごはんだ。


「まあでも、手持ち花火ならできるかもな」

「てもち?きらきら?」

「線香花火とかならできるんじゃねーの?」

「はなび、はなび」

「いや、するとは言ってねーけど。
……たく、口走らなきゃ良かった」


ヒロトの舌打ちがきこえる。


「あのな、やるにしてもしっかり握らなきゃいけないんだぞ。
朝陽できんの?」

「ぎゅー」


手を一生懸命グーにしてみせる。

スプーンだってあまりおとさなくなったし、
きっと、きっと大丈夫なの。


「はー、買いに行くか。
その辺のスーパーにもあるだろ。
あいつらも呼べば、誰かしら張り切ってお前の面倒見てくれるだろうし」


手を何回もグーにして練習したら、胸がどきどきした。


また、しらないもの。
ぼくのしらないものが、また出てくる。


「ヒロトも、いっしょ、いる?」

「はー?
お前ひとりで花火なんかさせられる訳ないだろ」


目があって、うんうんと頷いた。

ヒロトも、いっしょ、だって。


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