温かな春~(同性)小説サイト~

思いのままに小説を書いたり、twitterでのリクエストにこたえたり、 作品に対する思いや秘話など語っていくサイトです。「冷たい春」の番外編を主に書いていますので、本編がまだの方は本編の方からぜひ読んでみてください!(Twitterに本編URLあります) twitter:@moco_ice

できること

冷たい朝


「う、うんうんうん」

たくさん、たくさん頷いた。
よく分かりもせずに、ただただ頷いた。

だって、ここにいれば良いって、ヒロトがいうから。

もしそれで良いなら、
ぼくは、それ以外なにもいらないの。

ぼくは、それだけで。


「お前は何もできねーよ」

「そうなの」

「でも」

「でも?」

ヒロトの大きなため息とともに、
やわらかくだきしめられて、頭をなでなでとされる。


こういうことはずっとされてこなかったから、何だかむずがゆくて、
でも、なみだがでそうになるような、へんな気持ち。


「できることだって、たくさんあるだろ。
お前にできること、俺にはできない」


あたたかくつつまれるなかで、首をかしげた。

なんとなく、ほめられたことが、わかる。


「ひろと、へん」

「はあ?慣れないことしてやると変とか言うんだな、お前」

「でも、これ、すき」

「あっそ」
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できること

冷たい朝


言葉はすこしつよいけれど、
ぼくに触れる手はあたたかい。

おもえば、ヒロトはずっとそうだった。

ぼくをつきはなすような言葉を言うのに、
触れる手はそんなに痛くないの。


「大体、何で急にやろうなんて思ったんだ。
できなくて当たり前だろ、お前は。
できるようになると面倒くせぇぞ、俺がこき使う」

「うんうん」

「あまりよく理解できてないよな。
とりあえず、お前はまだできなくて良い」

「でも、できないとどこかへ行く?」

「はあ?誰が」

「ぼく」

「なんでお前がどこか行くんだ。
お前みたいなのにほっつき歩かれると困る」


外へでると、こまる?

こまるなら、どこかへ行かなくても良いの?


「ふーん。なんか、なんとなく分かったわ」

「分かった?」

「お前が馬鹿なことがな」

「う?」

「ここにいれば良いんだよ、お前は。
行く場所もないだろ」


できること

冷たい朝


「でも、できない」

「そりゃあな」

「なんで、できない?」

「へぇ」


物珍しそうな顔で、ヒロトがぼくをみつめる。


「そんなこと思うんだ。お前。
人間らしくなってきたじゃん」


何も言えずに服をつかんでいた手を、とられる。


「考える必要なかったことなのに、面倒くせぇ」


それから突然ぎゅっとだきしめられて、いっしゅん何が起きたかわからなかった。


こうやってだきしめられることなんて、本当に経験がない。


「ちっせえな、ほんと」

「う?」

「良いからしばらくこうされてろ。
ほんと、面倒くせぇなお前は」


まったく、嫌なきもちはしなかった。
むしろ、ぽかぽかあたたかくて、
不安とか、もやもやとか、くやしいきもちとか、
ぜんぶ、どこかに飛んでいくようで。


「ぎゅーは、すごいの」

「はあ?」

「なんか、すごいの。
心が、ぽって」

「お前の表現は抽象的すぎて分かんねーよ」


ヒロトのからだはおおきくて、
このひとといると、心がさわいだり、ほっとしたり、いそがしくて。


「ヒロトは、変」

「朝陽の方が100倍変だろ。まったく」





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できること

冷たい朝


「ん、うん、うん」

「なに?」


言葉にならなくてうなずいたら、
ヒロトが目をほそめてぼくをみつめる。

それがとてもあたたかくかんじて、
なぜか、胸がじんじんするようなかんかくがする。


「したいの」

「したい?なにを」

「おうちの、こと」

「家のこと?
何でまた。お前にはまだ無理だろ」


何でだと言われるとうまく説明ができなかった。

いつもヒロトが家のなかをうごいているから?
家のことしないと、どこかへいかなければならないから?


頭のなかで一生懸命せいりしようとするのに、
どうしても、ことばに変換されない。


「こ、こ」

きづいたら、ぼくは自分のおふとんの横をたたいていた。

ヒロトが少しだけ驚いた顔をして、ためいきを吐く。


「上手く言葉で言えない子どもが、
最終的にとにかく甘えたくなるみたいな感じだな」


布団に入ってきたヒロトが、
自分の腕をまくらにしてぼくのほうをみつめる。


いざ本当にとなりにくると、それもまたどきどきしてどうすればよいのかわからない。


「おうちのこと、したいの」

「それは分かった」


ヒロトの服をぎゅっとつかむ。

こういうことしても、
ヒロトはきっと、たぶん、なぐらないよ。

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できること

冷たい朝


ベッドに降ろされて、ヒロトは冷蔵庫のほうへとむかう。

料理するのかなとおもったらすぐにもどってきて、
ぼくの頭のうしろに冷たいものをあてた。


「い、た」

「痛いことじゃねーよ、馬鹿が」


心が、おかしいくらいうるさかった。
これはまた、あまり感じたことのない感情だった。

ぼくは、あのテレビを最後までみていないから、よくわからない。


家のことができないと、どういう風にでていくことになるのだろう。

自分から出ていかなきゃいけないのか、
それともおいだされるのか。


なぜかとても、こわいきもち。


「あたま、つめたいしてる?」

「ああ、お前が打ったりするからな。
で?何で今日変なことばかりすんの?」

「できるの」

「出来てねーよ」


できてない、とはっきり言われると、
また頭がぐるぐるした。


やっぱり、できていない。
どうしてぼくはできないの?

ぼくには、できないからできないの。

うんうんと頷いて納得しようとするけれど、うまくいかない。

だって、ぼくも、やりたいのに。


「何か初めて見る顔。
次は何の感情が増えたんだよ」


ヒロトがぼくの顔を見つめて、呟く。

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