温かな春~(同性)小説サイト~

冷たい朝

おかえりとさよなら

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「いたみ……どめ」

「痛み止めもお金がかかるんだぞ」

「……痛い、よう」


目の前がちかちかして、
痛い、以外のことばがうかばなかった。

きっとみんなこんな風になっているのに、
どうしてみんなは、痛いっていわないのだろう。

やっぱりこれは普通のことで、

きっとぼくに、堪え症がないのだとおもう。


「言っとくけど、痛みを瞬間的に止めたところで切れたら痛いんだからな」

「……う、ん」


ふいに、うでの中に針がはいっていくのがわかった。

針でさされたことは何度かあったけれど、
高槻さんのは、ちっともいたくなかった。


ぼんやりと天井をみつめながら、
ぼくのすきなことをおもいうかべる。


あけにくいパンと、
朝と、
絵本と、
それから、おなまえ。


「……あ。たかつき、さん。そういえばうれしいこと、あった」

「ふーん」

「あのね、名前を、決めてもらったみたいだった。
施設長さんが、最近”にんぎょう”って呼ぶの」

「お前、人形の意味知ってるのか?」


にんぎょうに意味なんてあるのだろうか。
ふるふると首を振ったら、彼はどこか哀れそうな顔でぼくをみた。


「それ、名前じゃないし。
もっと良い名前つけてもらえよ」

「エーとか、ビーとか?」

「それも違うな」


せっかくもらった名前を、否定された。

本当は、いいお名前じゃないんだって。
ぼくは、ぼくにも。


胸がぎゅっとした。

しめつけられて、痛い、痛いってなる。


おなまえがほしいっておもうことは、
おかしなことなのかなぁ。

だってみんな、おなまえがあるのに。


「……なんだ。僕には、やっぱり名前がないんだね」

「施設長は、お前に興味を持っていないからな」

「うん、知ってるの。
興味ないから、出してくれるって言ってた」

「出してくれる?檻からか?」

「……うん、あと一回、ものすごく痛いの耐えたら、あそこから出すって」


にこにこ笑うおひさまが、すき。
一度でもあれがみられたら、きっと、すごく、いいことなの。


「外出るの、嬉しいか?」

「うん。春がむかーし、外の朝は明るいって言ってた。
絵本見せてくれて、ほらねって。
太陽が笑ってるの」


まっくらでつめたくて、せまいおへやでしか生きてこなかったけれど、
ほんとうに、明るい世界はあるのかなぁ。



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この時は

うー、ゔー、朝陽ちゃん痛いね。もう少しの辛抱だよ。あー、わかっていても辛い。この時は、まだ「朝陽」ちゃんじゃないんだよね。これから、朝陽ちゃんになって、朝が見られるから頑張れ。真っ直ぐだよね〜。真っ直ぐ過ぎて眩しいわ。きっと、この真っ直ぐさに高槻さんもやられたんだな。うんうん。

お天気になったら昼間の暑さにグッタリ。そして、夜にはブルブル。こんな日が続きそうです。お身体にお気を付けくださいね。

わかってても…

やっぱりわかっていることでも、悲しくなります。
でも。後少しの辛抱(>_<) がんばれ!
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