温かな春~(同性)小説サイト~

翔×悠

プレゼント⑤

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悠⑤

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「……翔さ、ひよこ好き?」

「へ?まあ好きだけど?春君のひよこさんとか可愛いよね」

「あれより少し小さいのとかでも好き?
手触りとかは、そこそこいいと思うんだけど」

心臓がどきどきして、声が小さくなっていくのが分かる。

こうして石橋を叩いたところで、何が変わると言うのだろう。


思うのは、家族があった頃の誕生日のことだった。
何かを願って、それが一瞬にして崩される瞬間。


「うん。大丈夫だよ」

何を思って、何を知って、大丈夫などと言っているのだろう。

指先が震えて馬鹿みたいって思った。
こんな怖い思いするくらいなら、買わなきゃ良かったのに。


「あ、げる」

腕をこれでもかというくらいに伸ばした。


少しだけ間があく。
冷や汗が出るのではないかと思うくらい、怖かった。


翔がそれを受け取り、中を開けているのが分かる。
翔の顔が見れなかった。

一体どんな反応をするのだろう。


「ふふ」

翔の笑い声がして、ゆっくりと顔を上げる。

「悠」

目に映った翔の満面の笑みとともに、突然抱き締められた。


「ちょ、車内……っせま、なに?」

「ありがとう、すごく嬉しい。
ねぇ、これプレゼントってこと?
やばい、すごく嬉しい」


まるで宝石でも貰ったかのようにはしゃぐ翔が、俺の頬に触れる。
不必要な程、顔が近い。


「嬉しい、嬉しい。どこに飾る?
ひよこさんの横に飾ろっか。あそこなら、毎日触れられる」


翔の表情に、無駄に入っていた力が抜けていく。
意味もなく涙が出そうで、必死に堪えた。


普通こんなに、喜ぶ?
何でそんなに、喜ぶの。


「宝物になった」

綺麗に笑った翔が、俺の唇にそっと唇を合わせる。

「……っなに、してんの」

「何か考え事してて隙だらけだったから。
続きは家に入ってやろっか」

「……っやんない」


翔の笑顔が頭から離れなくて、
本当に大切なものを持つように両手でしっかりと握る彼に、心に温かな何かが灯るようで。


あのひよこが、翔にとって宝物のようなプレゼントにもしなったというのなら、
あのときの嬉しそうな表情は、俺にとってもプレゼントみたいだった、なんて。

死ぬまで口にはしないだろうけれど。


「あ……り、がと」


自分にも届かないような声で呟く。

俺なんて何の取り柄もない人間を、受け入れてくれてありがとう。


それから、
玄関のひよこのぬいぐるみは増え、翔が過剰なまでに撫でるようになったのは言うまでもない。


もくじ  3kaku_s_L.png 呟き
もくじ  3kaku_s_L.png 冷たい朝
もくじ  3kaku_s_L.png 理人×春
もくじ  3kaku_s_L.png 翔×悠
もくじ  3kaku_s_L.png 蓮×唯
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もくじ  3kaku_s_L.png 春と朝陽
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