冷たい朝
くらやみ
それから、どれだけなぐられたかわからないよ。
施設長さんは針みたいなの物ももっていて、
気づいたら、手にいっぱい穴ができていたの。
「ここまでされて嫌がらないって、気持ち悪いよ」
首をかしげた。
痛いから、はやくおわってほしいの。
でも、嫌がり方なんて知らない。
だって、いつものことなの。
うまれたときから、ずっとこうなの。
「化膿したら汚いから、高槻のとこ行ってきてよ」
うんうんと頷いた。
高槻さんは、”おいしゃさん”なんだって。
少し前から、この施設にいるよ。
高槻さんがいるのは、ぼくのお部屋から20歩くらいあるいたお部屋。
この前かぞえながら行ったから、よく覚えてるの。
施設長さんがお部屋から出たら、
こまかくなった”朝”をかき集めたよ。
でも、どれだけくっつけようとしてもくっつかないし、
それはもう、おひさまにはならなくなってしまったの。
ぼくは、やぶられてしまった絵本を、部屋のすみに置いた。
いつか、願いが叶うようなことがあったら、
あの絵本をもとに戻してもらうのになぁ。
立ち上がったら体がふらふらして、倒れそうっておもった。
「たかつきさんの、ところ」
あたまが真っ白で、まわらなくて、口にしながら歩き出す。
いつものことだから、かなしくないし、さみしくないよ。
ただほんのすこし、冷たいだけ。
あぁ…
泣けて来ますm(。≧Д≦。)m