冷たい朝
くらやみ
ぼんやり天井をながめていたら、
ドアがあいて、大きな目がかおをだす。
春だ。
「え、あーえーと、あの……」
ぼくにまだ名前ができていないから、
きっと呼ぶ名前にこまっているのだ。
「なーに?」
「うん、これ……」
春は、四角の物をもっていた。
絵がのっている。
"絵本"とよばれるものだって、きいたことがある。
「君、絵本興味ある?
良かったら、一緒に読まない?」
「うんうん、みるの」
読むものは、ぼくにはむずかしかった。
ぼくは生まれたときからずっとここにいるから、
字はよめないし、かけなかった。
でも、見ることだったらできるよ。
みんながおはなしする声でことばは覚えたから、
いつか、文字がよめるようになったりするのかなぁ。
「入っても、良い?」
「うんうん」
春は、ゆっくりとあるいてきてぼくのおとなりに座る。
それから、絵本をみせてくれたよ。
きらきらしていて、おおきなまる。
「これ、なーに?」
「お日様だよ。
朝になると出てくるんだ。
ここは……真っ暗だから見えないね」
「そうなの」
おひさま。
あたたかそう。おひさま。
「温かな朝」
「あたたかなあさ?」
「絵本のタイトルだよ」
「そうなの」
有難う(*´ω`*)