高槻×朝陽
夏バテ
朝陽がお金を握りしめて、俺が指さしたレジへと進む。
「その人に渡せ」
「うんうん、どーぞ」
それからアイスを手渡すと、お金を差し出した。
「普通はいくらですって言われてからお金は渡すんだよ」
「そうなの」
それでもレジの女性は微笑んで、お金を受け取る。
「はい、お釣りですよ」
朝陽の手のひらに、92円のお釣りが渡される。
「ヒロト、あげたよりたくさんもらったの」
「大丈夫だから。
あまり大きな声で言うなって」
少し頭に疑問符を浮かべる女性だったが、取り分け気にもしていないようだ。
こいつを外に連れ出すと、毎回はらはらして仕方がない。
「外にベンチがあったからそこで食ってろ。
こっちに来い」
手を引いて外で連れ出すと、朝陽は不思議そうな顔をした。
「おそとなのに、さっきより、あつくないの」
「ここは屋根があるからな。
暑い時は、屋根の下に来ると暑くなくなる」
「そうなの」
意味もなく屋根に手を伸ばす朝陽だが、当然届くはずもない。
「それ、開けろよ」
「うんうん」
アイスを手にした朝陽が、強引にそれを引っ張る。
頭の中に、最悪の光景が浮かんだ。
強引に引っ張ることで、渦巻いた部分が取れてしまうのだ。
そうなってしまっては、不器用な朝陽が食べられるはずもない。
「……俺が今日は開けてやるよ」
「う?分かったの。
つめたいよ?」
「知ってるよ。冷たい食べ物だからな」
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