高槻×朝陽
ホラー特番
高槻
―――――――――
たまたまついていたホラー番組を、朝陽は食い入るように見ていた。
やはり”怖い”という感覚はあまり分からないのか、
口を開けてぼんやりとそれを見ている。
「ヒロト、まっくら」
「まあ、こういうのは無駄に暗いからな」
表情1つ変わらない朝陽に、チャンネルを変えてやろうとも思うが、
あまりに食い入るように見ているからわざわざ変える気持ちにもならない。
まあこんなの、怖くもないよな。
そもそも感情は希薄な朝陽だ。
もっと怖い経験はたくさんしてきたと思うし、
むしろ、そっちの方が日常だったのだから。
大きな音と共に、画面いっぱいに女の人の顔が出てくる。
明らかに驚かせようとしているが、
朝陽はそれにも特に反応を見せない。
「飯、作るかー」
立ち上がると、ふいに服が引っ張られる感覚がした。
驚いてみると、朝陽が俺の服を掴んでいる。
「行く、や」
「は?行くなっていってんの?」
うんうんと頷く朝陽に、大きなため息を吐く。
行くなって言ったって、勝手にご飯は湧いてこないっつーのに。
「おいおい、離せって」
「や」
よく見ると、朝陽の手に力が入っている。
表情こそ変わらないが、じっと俺の顔を見つめているのだ。
「……もしかして、怖かった?」
「ヒロト、行かない」
首を振る朝陽がほんの少しだけ可愛く思えて、仕方なく隣に座る。
彼は納得したように、うんうんと頷いた。
”お化け”とか”ホラー”とかて少しでも怖いと思ったなら、
”怖い”を知らなった朝陽の成長ではないだろうか。
少しずつ様々な感情が出てきた朝陽が落ち着くまで、
仕方なく隣に座っていた。
過去の事を当たり前だと思っていた朝陽にも怖いという感情が芽生えてきて、
これから少しずつでもいろんな感情が表現できたらいいなって思います!