翔×悠
プレゼント②
悠②
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買う、買わないは別として、とりあえず店の中に入る。
「いらっしゃいませー」
元気な店員の声に一瞬で外へ出て行きたくなる。
目を向けた先には、うさぎのもふもふしたぬいぐるみや、
くまのぬいぐるみなんかもあった。
壁はピンク色で、ファンシーだ。
逃げ出したい、真っ先にそう思う。
やっぱりあんなもの、翔が喜ぶ訳がない気がして来た。
「何かお買い求めですかー?」
「……っあ」
若い女性に顔をぐいっと近付けられて、思わずひよこのぬいぐるみを指差す。
「あ、あれを、下さい」
「はーい!プレゼント包装します?」
プレゼント。
手首のブレスレットが目に入る。
プレゼントをされたことなんて、初めてだった。
プレゼントしたことも、もちろんない。
「……お願いします」
声は小さくて、馬鹿みたいだなと思えた。
こんな物をプレゼントしたとして、何になるのだろう。
急に、泣きたくなるような感覚になる。
やばい、怖いかもしれない。
こんな物、馬鹿にされるに決まっている。
「あの、やっぱりやめ……っ」
「はい、綺麗に包めましたよー」
店員の手の中には、綺麗に包まれた物が握られていた。
もう後には引けず、仕方なく支払いをする。
ーー捨てよう。
ばれないように何とか持ち帰って、ゴミ箱の下に入れ込んでしまえばばれないかもしれない。
初めて働いて、初めて得た給料で初めて買ったものが、
"誰か"にプレゼントしようとしたひよこのぬいぐるみなんて。
世界を常識はずれな程恨んでいる人間の行動とはとても思えない。
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