蓮×唯
看病③
台所から、本来であれば絶対にしないような陶器と陶器がぶつかるような音がする。
一体どんな雑な調理をしようとしているのだろう。
「水を、600ml鍋に入れる……。600ってくどれくらい!?
ぺ、ペットボトルー!」
「何でペットボトルなんですか」
「ペットボトルに5本線引いて1本と1目盛り!」
「いいですよもう、適当に入れたら」
いくら料理をしたことがない唯とはいえ、
おかゆ程度でおかしな物はさすがに出来ないとは思うけれど。
「ね、ネギがない……っ!買いに行かないと!」
「なくてもいいですから。別に」
「でもここに!書いてある!」
「何でも一緒にしなきゃいけない訳じゃないですから」
唯が慣れない料理をしているせいで、いつもよりも却って喋ることが多くなっているような気がする。
「に、にんじんのいちょう切り!?何故いちょうがこんなところに出てきちゃったの!」
本当に、バカだなぁと思う。
変わった方が、俄然早く終わりそうだけれど。
唯が携帯を真剣に眺めて唇を尖らせる。
真剣に見つめすぎて、変な顔になっている。
看病、か。
思えば、看病なんかしてもらったことないかもしれない。
「美味しく作るから!」
「はいはい」
味に期待なんかしていないけれど、
一生懸命な唯の表情を眺めるのは、面白いかもしれない、なんて。
頑張れ