温かな春~(同性)小説サイト~

春と蓮

ブライダルベール

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理人さんが立ち上がり、かわいらしいコップを持ってきてくれる。
そこに一輪花をさせば、それはとても綺麗に見えた。

「少し、行ってくる」

「うん、一緒に行く?」

「ううん、一人で、行ってみる」

「分かった。マンションの外には出たらだめだよ」


理人さんと外には出ない約束をして、家を出た。
彼が横にいない中一人で歩くことはそんなに多くなくて、どことなく緊張する。


インターホンを鳴らしたら、想像通りの人が出てきて冷たい目で俺を見下ろした。
会いにきたはずなのに、心臓がどきどきしてたまらない。


「春?1人で何しに来たんですか」

抑揚のない声で話すその人を、何と呼んだら良いのか分からない。

”お父さん”と呼ぶのも気恥ずかしく、
”蓮さん”と呼ぶのもあまり経験のないことだった。


「……あ、あの、その」

「なに」


小さな花を、差し出した。

言えることからで良い。

自分が、今、言えることだけで良いから。

不器用でもなんでも、伝えられることだけで良いから。


「し、幸せを願うのは……、一緒だなって」

声が裏返って、緊張のあまり目に涙が溜まりそうな感覚がする。


「俺だって、その、幸せになってほしいって、思うの。
それと、ずっと、ずっと、ありがとうって」

顔があげられず下を向いていたら、頭をぽんぽんと2度撫でられる。

驚いて顔をあげたら、彼はほのかに微笑んでいるようにも見えた。


「はいはい、どうも」

それは、今まで聞いた彼のどの言葉も、温かく感じて。


「名前の由来通りになりましたね」

「由来?」

「あとで理人さんにでも聞いて見て下さい。
彼には話したことがあるので」


うんうんと頷くと、彼がそっと目を細める。


「ありがとう」


胸が、きゅっとなった。


不器用でも伝えること。
そしてそれが、伝わること。


今生きていることを、またひとつ、嬉しいと思えた。


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もくじ  3kaku_s_L.png 冷たい朝
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~ Comment ~

今晩わ

朝陽の次に、春の話しは癒されます。理人に愛されて、春の陽射しのように温かな春が大好きです。

春の温かい心がほわっとしていてとても幸せな気持ちになりました。ほかほかします。またひとつ経験ができましたね。おめでとう!

Re: 今晩わ

春と朝陽はいわゆる小動物コンビなので、可愛いと言ってもらえると嬉しいです!
これからも頑張りますねー!

コメ返

1つ1つ分かることが増えていっていますね(*´▽`*)
これからもっともっと彼の中で世界が広がっていくことと思います!
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