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【  2017年09月  】 

おかえりとさよなら

冷たい朝

2017.09.30 (Sat)

 春のすすり泣く声は、ずっときこえたよ。ぼくは、朝がどうだったのか、おひさまがどうだったのか知りたかったけれど、春にはなしかけることはできなかったの。こっそりとおへやをのぞいたら、春はみやぎさん、みやぎさんって言ってないてた。あわせてあげたいなぁって、おもった。春が泣きながらあいたがっているみやぎさんという人に、あわせてあげたいの。ぼくは春におかえりっていって、また絵本をよんでほしかったけれど、春が...全文を読む

おかえりとさよなら

冷たい朝

2017.09.28 (Thu)

 ――それから、何日もたったとおもうけれど、ぼくの世界はやっぱりまっくらで、何もかわらなかったよ。高槻さんのおへやでみるぼくのお顔は、少しも”ぼく”じゃなくて。ほんとうのぼくはどこだったかすっかりわからなくなってしまったの。そんなとき、うれしいことがあったよ。ずっと、長い間いなくなっていた春が、かえってきたの。でもね、ちっとも嬉しそうなおかおをしていなかった。ぽろぽろお水を目からながして、「みやぎさん、...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.26 (Tue)

 パンにかぶりついて、たくさんかむ。たくさんかんだら、お腹いっぱいになるって、誰かが話していた気がするの。おへやの隅には、絵本の小さな紙が1つだけ残っていた。ほかはかたづけられたみたい。その紙をぎゅっとにぎって、天井をみあげた。ぼくはずっと、くらいところしかしらないの。いつか、朝がみられるようになったり、するのかなぁ。おとうさんとおかあさんが、誰かわからないし、施設長さんは、ここで僕をなぐったりする...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.23 (Sat)

 「お前、顔分からなくなったな」「わからなくなった?」高槻さんのお部屋にある鏡をのぞいたら、そこにはぼこっとふくれた頬と、そのせいであまり開けられない瞼がうつっていた。まるで、自分のおかおじゃないみたい。あれ、ぼくは、そもそもどんな顔をしていたっけ。誰かに聞こうかなぁと思ったけれど、おもえばずっと前からなぐられることはされてきたから、きっと誰も、わからないのだろうなとおもった。「お前みたいなやつは、...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.20 (Wed)

 高槻さんの部屋についたら、彼はあからさまに嫌な顔をした。顔をしかめながら、たばこを吸っている。「お前が来ると、何つーか、面倒くさい」「そうなの?」「お前他の奴よりボコボコにされてくる」「う?」高槻さんは、切れ長の目に黒髪で、体にさわって治療するときは眼鏡をかけているよ。「手、見せろ」「うんうん」針で穴のあいた手をみせたら、彼は大きな声でため息を吐いたの。「良かったな、縫わなくていい」「よかった?ぬ...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.18 (Mon)

 それから、どれだけなぐられたかわからないよ。施設長さんは針みたいなの物ももっていて、気づいたら、手にいっぱい穴ができていたの。「ここまでされて嫌がらないって、気持ち悪いよ」首をかしげた。痛いから、はやくおわってほしいの。でも、嫌がり方なんて知らない。だって、いつものことなの。うまれたときから、ずっとこうなの。「化膿したら汚いから、高槻のとこ行ってきてよ」うんうんと頷いた。高槻さんは、”おいしゃさん”...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.17 (Sun)

 「ん?いいよ。ほら、名無しちゃん。春が絵本くれるって。と言っても、これ施設の本だけどねぇ」施設長さんが笑って、ぼくに絵本をわたす。それを胸に抱いたら、なんだかあたたかい気がしたよ。「行きますよ、春」「……は、はい」春はくもったような表情をして、レンさんの後ろをついて部屋をでていったよ。これから、一緒にすむんだって。ぼくは外にはでられないって施設長さん言っていたから、朝はまだみられないけれど、でも、こ...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.16 (Sat)

 春はそれから、絵本を声にだしてよんでくれたよ。どんなに泣いても、かなしくても、落ち込んでも、つめたくても、ねむれば朝はやってくるんだって。「朝って、すごいの」「そうだね」「ぼくも、いつか朝が見られるかな?」「うん、きっと」ぼくは、春が好きになったよ。春のことも、この絵本のことも、すき。どんなに目を凝らしても、朝はみえないけれど、この世界のどこかに、あるんだって。「ぼくはいつか、みたいの」「うん」「...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.15 (Fri)

 ぼんやり天井をながめていたら、ドアがあいて、大きな目がかおをだす。春だ。「え、あーえーと、あの……」ぼくにまだ名前ができていないから、きっと呼ぶ名前にこまっているのだ。「なーに?」「うん、これ……」春は、四角の物をもっていた。絵がのっている。"絵本"とよばれるものだって、きいたことがある。「君、絵本興味ある?良かったら、一緒に読まない?」「うんうん、みるの」読むものは、ぼくにはむずかしかった。ぼくは生ま...全文を読む

くらやみ

冷たい朝

2017.09.14 (Thu)

 ーーぼくは、ぼくだ。みんなにはすてきなお名前があるけれど、ぼくには、それがない。いつかできるものなのだろうけれど、ぼくにはまだ、それができないの。まっくらでつめたいぼくのへやは、血がたくさん流れる場所。みんなは、ぼくを痛くするよ。でも、それがぼくのされるべきことなのだとおもう。だって、ずっと、そればかりだから。ぼくの生まれた場所は、 "しせつ"とよばれていて、たくさんのこどもがいるよ。ぼくみたいに、...全文を読む

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